職種別の転職

サステナビリティ(ESG)の仕事に転職するには|仕事内容・求められる経験・開示ルールの変化

脱炭素や人的資本、人権への対応など、企業のサステナビリティ(ESG)への取り組みは、投資家や取引先から細かく見られるようになりました。開示のルールも整い、この分野を担う人材を求める会社が増えています。この記事では、サステナビリティの仕事の種類、求められる経験、ルールの変化、転職の進め方を整理します。

先に結論:専門分野と「開示・実務」の経験を組み合わせる

サステナビリティの仕事は幅が広く、環境、人的資本、人権、ガバナンスなど扱うテーマもさまざまです。転職で評価されやすいのは、特定のテーマの専門性と、開示や社内の取り組みを実際に進めた経験の組み合わせです。「関心がある」だけでなく、何をどこまで担当したかを具体的に示すことが大切です。

サステナビリティ(ESG)とは

ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字です。投資家が企業を評価するときに、売上や利益だけでなく、環境への負荷、従業員や取引先への配慮、経営の仕組みを見る考え方として広がりました。サステナビリティは、企業が長く事業を続けるために、こうした課題にどう向き合うかを指す言葉として使われています。

開示ルールの変化

この分野の仕事が増えた背景には、開示のルールが整ってきたことがあります。

  • 2023年1月の内閣府令の改正で、有価証券報告書に「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設されました。「ガバナンス」と「リスク管理」は必須の記載事項とされ、「戦略」と「指標及び目標」は重要性に応じて記載することとされています。あわせて、人材の育成方針や、女性管理職比率などの人的資本・多様性に関する開示も求められるようになりました(金融庁 2023年1月31日公表)。
  • 2025年3月には、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が日本版の開示基準を公表しました(SSBJ)。この基準をどの企業にいつから適用するかは、金融庁で検討が進められています。
サステナビリティ開示の流れ 2023年1月 内閣府令の改正有価証券報告書に記載欄を新設2023年3月期から 記載が始まるガバナンス・リスク管理は必須2025年3月 SSBJ基準の公表日本版の開示基準。適用の範囲と時期は金融庁で検討・決定されていく
開示のルールが整うにつれ、社内で開示を担う人の役割が大きくなっています

開示のルールが細かくなるほど、社内でデータを集め、正しく開示し、取り組みを進める人の役割が大きくなります。最新の制度の内容は、金融庁やSSBJの公式サイトで確かめてください。

職場ごとの仕事内容

職場主な仕事生かしやすい経験
事業会社のサステナビリティ部門方針・目標づくり、データの収集、開示資料の作成、社内の取り組みの推進経営企画、IR、環境・安全、人事、広報
コンサルティング会社企業の戦略づくり、開示の支援、温室効果ガスの算定支援などコンサル経験、環境・会計の専門知識
金融機関・投資の会社投資先のESG評価、対話(エンゲージメント)、ESG関連の商品づくりアナリスト、融資・投資の経験
監査法人・保証の仕事サステナビリティ情報の確認・保証監査、会計、内部統制

テーマごとに求められる知識

  • 環境:温室効果ガスの排出量の算定、気候変動のリスクと機会の分析、省エネ・再エネの取り組み
  • 人的資本:人材育成、エンゲージメント、多様性に関する指標づくり
  • 人権:取引先を含めた人権への配慮(人権デュー・ディリジェンス)
  • ガバナンス:取締役会の体制、リスク管理、内部統制

人的資本・多様性の開示で扱う指標

2023年の改正では、有価証券報告書の「従業員の状況」の欄に、多様性に関する指標を書くことも求められるようになりました。具体的には、女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間の賃金の差異の3つで、女性活躍推進法や育児・介護休業法に基づいてこれらを公表している会社が対象です(金融庁 2023年1月31日公表)。

こうした指標は、人事部が持っているデータをもとに作ります。そのため、人的資本の開示はサステナビリティ部門と人事部が一緒に進めることが多く、人事の経験を持つ人がこの分野に移る入り口にもなっています。数字を出すだけでなく、人材育成の方針や社内の環境づくりの方針とあわせて説明することが求められるため、制度づくりに関わった経験も生かせます。

年代ごとの考え方

20代〜30代前半

データの集計や資料の作成など、実務を支える役割から始めることが多い時期です。数字を正確に扱う力と、関連する分野の勉強を続けている姿勢が評価されます。

30代後半〜40代

方針づくりや、社内の多くの部署を巻き込んで取り組みを進めた経験が求められやすくなります。開示の責任者や、部門のまとめ役としての経験があれば、大きな強みになります。

未経験から目指せるか

サステナビリティの専任の経験がなくても、近い仕事の経験を生かして移る人はいます。たとえば、次のような経験はこの分野とつながりがあります。

  • 工場の環境管理や安全衛生、省エネの担当
  • 経営企画やIRで、統合報告書や有価証券報告書の作成に関わった経験
  • 人事で、人材データの集計や人的資本の開示に関わった経験
  • 調達で、取引先の調査や監査に関わった経験

今の会社の中でサステナビリティの取り組みに関わる機会があれば、まず社内で経験を積むのも現実的な方法です。そのうえで転職すると、具体的な経験として伝えられます。

職務経歴書でのアピールの仕方

  • 担当したテーマ(環境、人的資本など)と、扱った指標(排出量、女性管理職比率など)
  • 関わった開示資料(有価証券報告書、統合報告書、サステナビリティレポートなど)と担当範囲
  • 社内の関係部署を巻き込んで進めた経験(データの集め方を整えた、など)
  • 取り組みの成果(算定の範囲を広げた、評価機関からの評価が上がった、など)

この分野は、社内の多くの部署からデータや協力を集める仕事です。部署をまたいで調整した経験は、職種を問わず評価されやすいポイントです。

特化型の転職エージェントを使う理由

サステナビリティの仕事は新しい分野で、求人の書き方も会社によってばらばらです。一般的な転職エージェントでは、経験の価値が伝わりにくいこともあります。ESG・サステナビリティの転職に特化したエージェントなら、仕事内容の違いや、どの経験が評価されるかを踏まえて求人を紹介してもらいやすくなります。

特化型のサービスは、対象とする経験や転職の時期に条件を設けていることがあります。登録する前に確かめましょう。エージェントの仕組みは転職エージェントと転職サイトの違いで説明しています。

温室効果ガスの算定で使われる「Scope1・2・3」

環境の分野で特によく出てくるのが、温室効果ガスの排出量の算定です。国際的な算定の考え方では、排出量を次の3つに分けて数えます。

  • Scope1:自社の工場や車などで、燃料を燃やすなどして直接出している排出
  • Scope2:自社が使う電気や熱を作るときに出ている排出
  • Scope3:原材料の調達、製品の輸送や使用、廃棄など、取引先も含めたそれ以外の排出

Scope3は取引先からデータを集める必要があり、範囲も広いため、算定の手間が大きくなります。Scope3の算定に関わった経験や、取引先からデータを集める仕組みを作った経験は、この分野で評価されやすい経験です。

職場選びで確かめたいこと

サステナビリティの部門は、会社によって位置づけや体制が大きく違います。応募する前に、次の点を確かめておきましょう。

  • 部門の位置づけ:経営企画の中にあるのか、独立した部門なのか。経営層とどのくらい近いか
  • 部門の人数と役割分担:少人数で開示から社内の取り組みまで幅広く担うのか、分担があるのか
  • 仕事の中心:開示資料の作成が中心か、社内の取り組みを進めることが中心か
  • 社外との関わり:投資家や評価機関、取引先との対話がどのくらいあるか

開示の作業が中心の職場では、決まった時期に仕事が集中しやすくなります。取り組みを進める仕事が中心の職場では、社内の多くの部署との調整が多くなります。自分が力を発揮したいのはどちらかを考えて選びましょう。

転職活動の進め方

  1. 経験の棚卸し:担当したテーマ、扱った指標、関わった開示資料を書き出す
  2. 方向を決める:事業会社、コンサル、金融機関など、どの職場で働きたいかを決める
  3. 情報を集める:興味のある会社のサステナビリティレポートや統合報告書、有価証券報告書の記載欄を読み、取り組みの段階をつかむ
  4. 応募と面接:読んだ資料をもとに、その会社の課題と自分の経験がどう役立つかを話す

応募先の開示資料を事前に読んでおくのは、この分野ならではの準備です。資料の内容に触れながら話すと、関心の深さと実務の理解が伝わります。

面接で聞かれやすいこと

  • これまで担当したテーマと、具体的に進めた取り組み
  • 社内の部署の協力をどうやって得たか
  • 開示のルールの変化をどう捉えているか
  • 応募先の会社の取り組みについて、どう感じたか

よくある質問

資格は必要ですか?

必須の資格はありません。環境や会計、人事などの専門知識を示す手段として、関連する資格を取る人もいますが、転職では実務の経験が重視されることが多いです。

サステナビリティの求人は、どこで探せばいいですか?

転職サイトでは「サステナビリティ」「ESG」「脱炭素」「人的資本」などの言葉で検索すると見つけやすくなります。会社によっては「経営企画」や「CSR」「IR」の求人の中に含まれていることもあるので、仕事内容まで読んで確かめましょう。特化型のエージェントは、公開されていない求人を持っていることもあります。

英語は必要ですか?

海外の基準や評価機関の資料は英語のことが多く、外資系企業や投資の仕事では英語力が求められやすくなります。国内の事業会社でも、英語の資料を読める力があると仕事の幅が広がります。

まとめ

  • サステナビリティの仕事は、専門テーマと開示・実務の経験の組み合わせで評価される
  • 2023年に有価証券報告書のサステナビリティ記載欄が新設され、2025年にSSBJ基準が公表された
  • 職場は事業会社、コンサル、金融機関、監査法人などに分かれ、仕事内容が違う
  • 環境管理、IR、人事、調達など、近い仕事の経験から移る道もある

出典:金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(2023年1月31日)/サステナビリティ基準委員会(SSBJ)