職種別の転職

経理の転職で失敗しないために|求められる経験・簿記の扱い・求人票ではわからない職場の見極め方

経理の転職では、年収や残業時間といった条件だけで選ぶと、「入ってみたら紙とExcelの手作業ばかりだった」「任される範囲が思っていたより狭かった」といったずれが起きがちです。この記事では、経理の仕事の段階と求められる経験、簿記検定の扱い、制度の変化で変わった仕事、そして求人票ではわからない職場の見極め方を整理します。

先に結論:「どこまでできるか」と「どんな職場か」の2つで選ぶ

経理の転職で大切なのは、自分がどの段階の業務までできるかを整理することと、応募先の経理がどんな体制で回っているかを確かめることの2つです。同じ「経理」の求人でも、仕訳の入力が中心の職場もあれば、決算や税務、管理会計まで任される職場もあります。

経理の転職の進め方 1. できる業務を棚卸しする日次・月次・年次のどこまでできるか2. 目指す方向を決める専門を深める・範囲を広げる・働き方3. 職場の中身を確かめるシステム化の度合い・業務の範囲4. 応募と面接数字と使ったツールで具体的に話す5. 条件を確認して入社繁忙期と残業の実態を確かめる
求人票の条件だけでなく、職場の実態まで確かめるのが失敗しないコツです

経理の仕事の段階と、求められる経験

段階主な業務求人でよく見る書き方
日次伝票の起票、仕訳の入力、経費精算、現金・預金の管理日次業務の経験
月次売掛金・買掛金の管理、請求書の処理、月次決算、試算表の作成月次決算の経験
年次年次決算、決算書の作成、税理士との連携、法人税などの申告の準備年次決算の経験
応用連結決算、開示資料の作成、管理会計、予算管理、監査対応連結・開示・管理会計の経験

経験者の転職では、月次決算まで一人でできるか、年次決算にどこまで関わったかがひとつの目安になります。年次決算は、税理士事務所や上司が中心になる職場も多いので、「どの作業を自分が担当したか」を具体的に言えるようにしておきましょう。

未経験から経理を目指す場合

未経験から経理を目指す場合は、若いうちのほうが採用の間口は広い傾向があります。営業事務や総務などで、請求書の発行や経費精算に関わった経験があれば、経理につながる経験として伝えられます。

簿記検定はどう扱われるか

経理の求人では、日本商工会議所などが実施する簿記検定が、知識の目安としてよく使われます。

  • 簿記3級:仕訳と帳簿づけの基本。未経験者が基礎を示すのに役立つ
  • 簿記2級:商業簿記に加えて工業簿記(原価計算)も含む。経験者の求人で目安にされることが多い
  • 簿記1級:会計基準や連結など、より専門的な内容

ただし、経験者の転職では資格よりも実務の経験が重視されることが多いです。資格は「知識がある」ことの証明、実務経験は「仕事を回せる」ことの証明と考えましょう。未経験者や経験の浅い人にとっては、簿記2級が書類選考で有利に働くことがあります。

制度の変化で増えた仕事

ここ数年、経理の仕事に大きく関わる制度の変更が続いています。

  • インボイス制度:2023年10月1日から始まった消費税の仕組みです。受け取った請求書が適格請求書の条件を満たしているかの確認など、経理の確認作業が増えました(国税庁 インボイス制度について)。
  • 電子帳簿保存法:メールやWebで受け取った請求書など、電子でやりとりした取引のデータは、電子のまま保存することが求められています(国税庁 電子帳簿保存法関係)。

こうした制度への対応をきっかけに、会計ソフトや経費精算システム、請求書の受け取りサービスを入れる会社が増えました。制度に合わせて業務の流れを変えた経験や、システムの導入に関わった経験は、転職で伝える価値のある経験です。

求人票ではわからない、職場の見極め方

経理の転職でずれが起きやすいのは、求人票に書かれにくい部分です。面接やエージェントを通じて、次の点を確かめましょう。

1. システム化の度合い

  • 会計ソフトは何を使っているか。クラウドか、社内のサーバーか
  • 請求書や経費の申請は紙か、システムか
  • Excelでの手作業や、同じ内容の二重入力がどのくらいあるか

システム化が進んでいる職場では、入力作業より確認や分析の仕事が増えます。反対に、紙とExcelが中心の職場では、業務の改善を任される可能性もあります。どちらが良い悪いではなく、自分が望む働き方に合っているかで判断しましょう。

2. 任される業務の範囲

  • 経理部門の人数と、それぞれの担当の分け方
  • 決算や税務申告を、社内でどこまで行い、税理士事務所にどこまで頼んでいるか
  • 入社後、どの業務から任され、いつごろ決算に関われるか

3. 忙しさの波

  • 月末・月初、四半期末、年度末の残業の実態
  • 繁忙期に休みが取りにくい時期はいつか

求人票の「残業月○時間」は平均であることが多いので、繁忙期にどのくらい忙しくなるかを聞いておくと、入社後のずれが少なくなります。

経理に特化した転職エージェントを使うメリット

経理の業務は、段階や範囲の違いが求人票だけでは伝わりにくい仕事です。経理・財務に特化した転職エージェントは、職場のシステム化の度合いや、任される業務の範囲など、求人票に載らない情報を持っていることがあります。担当者に経理の知識があれば、自分の経験を正しく評価したうえで求人を選んでもらいやすくなります。

特化型のサービスは、対象とする年齢や経験に条件を設けていることがあります。登録の前に、対象になるかを確かめましょう。エージェントと転職サイトの違いは、転職エージェントと転職サイトの違いにまとめています。

面接で伝えたいこと

  • 担当した業務を段階ごとに(日次・月次・年次・応用)
  • 使っていた会計ソフトやシステム、Excelでできること
  • 業務の改善の経験(締めの日数を短くした、手作業を減らした、など)
  • 制度の変更への対応の経験

「月次決算を担当」だけでなく、「月次決算を毎月○営業日で締めていた」「経費精算をシステムに切り替えて紙をなくした」のように、数字や具体的な変化で伝えると説得力が増します。

職務経歴書の書き方の例

経理の職務経歴書は、担当した業務を段階ごとに並べ、規模と使ったツールを添えると読みやすくなります。たとえば次のような書き方です。

書き方の例

【会社の概要】製造業・従業員約200名・経理部4名
【担当業務】日次(仕訳入力・経費精算・支払処理)、月次(売掛金・買掛金の管理、月次決算・試算表の作成)、年次(決算整理仕訳の作成、税理士事務所への資料提出)
【使用ツール】会計ソフト、経費精算システム、Excel(関数・ピボットテーブル)
【取り組み】請求書の受け取りを電子化し、紙の保管と手入力を減らした。月次決算の締めを1営業日早めた

数字は、出せる範囲で具体的に書きましょう。「どのくらいの規模の会社で、どこまでを自分で担当したか」がわかると、応募先は入社後に任せられる仕事を想像しやすくなります。

経理の転職でよくある失敗と、防ぎ方

「経理の転職は失敗が怖い」と感じる人は少なくありません。よくある失敗のパターンを知っておくと、事前に防ぎやすくなります。

よくある失敗起きる理由防ぎ方
任される仕事が思っていたより狭い求人票の「経理」の範囲があいまい入社後に担当する業務と、決算に関われる時期を面接で聞く
手作業が多く、忙しすぎるシステム化の度合いが求人票に書かれていない会計ソフト、請求書や経費の処理の方法を聞く
繁忙期の残業が想像以上残業時間が平均で書かれている月末・期末の残業の実態を聞く
一人で何でも任されて相談できない経理が少人数、または一人経理の人数と、税理士事務所との分担を確かめる
前任者がすぐ辞めていて引き継ぎがない欠員の理由がわからない募集の理由(増員か欠員か)と引き継ぎの方法を聞く

どれも、面接やエージェントを通じて事前に聞いておけば防げるものです。聞きにくいことは、転職エージェントを通じて確かめてもらう方法もあります。

会社の規模や種類で変わる経理の仕事

  • 上場企業:決算のスケジュールが厳しく、開示資料の作成や監査法人の監査への対応があります。業務が細かく分かれていることが多く、ひとつの分野を深めやすい一方、担当の範囲は限られることがあります。
  • 中堅・中小企業:少ない人数で経理全体を担うことが多く、日次から年次まで幅広く経験できます。総務や人事の仕事を兼ねることもあります。
  • 上場を目指す会社:社内の仕組みづくりや、管理の体制を整える仕事が増えます。忙しい分、仕組みづくりの経験が積めます。
  • 外資系企業:本社への報告や、英語での資料作成が求められることがあります。

どの会社が良いかは、深めたいのか、広げたいのかによって変わります。今後のキャリアの方向に合わせて選びましょう。

年代ごとの考え方

20代

経験者なら、日次・月次の経験に加えて、年次決算に関わりたいという意欲を伝えると評価されやすくなります。未経験から目指す場合は、簿記の勉強の進み具合と、数字を扱った経験を伝えましょう。

30代

月次決算を一人で回せること、年次決算に関わった経験が求められやすくなります。業務の改善やシステムの導入に関わった経験があれば、大きな強みになります。

40代

決算や税務を中心となって担った経験、後輩の指導やチームのまとめ役の経験が重視されます。管理職の求人では、経営層への報告や、予算の管理の経験も問われます。

経理に特化した転職サービスの中には、対象とする年齢や経験の目安を示しているところもあるので、登録前に確かめておきましょう。

よくある質問

経理の転職が怖いのですが、どう進めればいいですか?

怖さの多くは、「入ってみないとわからない」ことから来ています。上の表のように、確かめるべき点をあらかじめ書き出して、面接やエージェントに聞いていくと、不安は少しずつ減っていきます。在職中に活動すれば、合う会社が見つかるまで焦らず探せます。

経理のブランクがあっても転職できますか?

できます。ブランクの間に簿記の勉強を続けていたり、会計ソフトの使い方を学び直していたりすると、意欲として伝えられます。制度の変更(インボイス制度や電子帳簿保存法など)について知識を補っておくと安心です。

まとめ

  • 経理の転職は「どこまでできるか」と「どんな職場か」の2つで選ぶ
  • 経験者は実務経験、未経験者は簿記の資格が評価のよりどころになりやすい
  • インボイス制度や電子帳簿保存法への対応で、経理の仕事とシステム化が変わってきた
  • システム化の度合い、任される範囲、繁忙期の実態は、求人票ではわかりにくいので必ず確かめる

出典:国税庁 インボイス制度について/国税庁 電子帳簿保存法関係/日本商工会議所 簿記検定